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岸さんは苦虫をかみ潰したような顔をしていたが、管理官はただ僅かに視線を落とすだけだった。
俺はマキの隣に座りながら、管理官の顔を凝視していた。
俺の話が出ることで、この人がどんな表情をするのか、その裏にどんな感情が沸くのか、見たかった。
「単刀直入に言いましょう。ピンクフロイトを密輸し、六本木を中心に売りさばいている元締めは、三田村という外務省官僚です」
いきなり切り出したマキに、岸さんは当然の事、管理官も一瞬反応が出来なかった。
「……は?」
「それを、浅田さんは知った。そして、三田村の息のかかったギャングらに発砲されたんです。売人殺しで俺も相当あいつらの周辺を揺さぶって情報操作しましたんで、焦りが出たんでしょう」
「ちょ、ちょっと待った、外務省?」
岸さんの遮りに、マキはさっさと頷いた。
「間違いありません。麻薬を捌いている連中に正体を晒しているわけではないので、こいつを立件する証拠がありませんが、ここにきて、ヤクザがピンクフロイトに目をつけ、売人が客を強請って逆に殺された事件が起こり、正直私はやっと表に出てきたと喜びました。それまで、慎重すぎて何の証拠も上げられなかった」
「ちょっと待て」
いきなりマキの襟首をつかみあげた手があった。
一瞬岸さんかと思った。
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