転生

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 その男の名は、瀬尾真那賀(せおまなか)といった。年は二十代半ばといったところか。光の少ない場所で見ても、その鼻梁や顎の線はかなり美しい線を描いていた。 「追いかけるのに夢中で、一体どこをどう歩いてきたのか分からなくなりましたよ」  路地裏に体を潜ませて、真那賀はほとほと疲れ切ったというように両手で顔を覆った。  見えぬ目で、必死に追ってきたのだろう。よく見ればきちんと糊をきかせた綿麻の浴衣は皺くちゃ、首筋には汗が浮き、下駄を突っ掛けた指先は土埃で汚れていた。 『すまん』  俺が謝ると、真那賀は両手から顔を上げて微笑んだ。 「どうやら良いお人のようだ。生霊になると、当たり前だが皆混乱して、大概人の話など聞かずに人の飼い猫の体のまま、何処かへ行ってしまいますから。あなたのように、ちゃんと人の話を聞いてくれる方の方が珍しいです」  ()き猫というのだと、真那賀は言った。     
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