153人が本棚に入れています
本棚に追加
「あなたと関わるのはまっぴらごめんですよ。そう、もう、借金だって返し終えましたし、後は香木だって正規のルートから買えます。あなたとはこれっきりにさせてください」
「お前、その目で買い付けなんて出来んのか。国内で買ったら、馬鹿を見るだけだぞ」
「それだって犯罪に加担するよりましです。帰って下さい。もう二度とこの店の敷居を跨がないで」
マキは酷薄そうな笑みを口端に浮かべると、リュックをどさりと置いた。悠々とした動作で畳の上に上がる。
「今更、俺から逃げられると思ってんのか?」
真那賀の身体がじり、と後ずさる。マキは、野生の動物が獲物にゆっくりと近づくように真那賀の前に進んだ。
「犯罪に加担って、お前はもう加担してんだよ。不法侵入だって、警察に電話してみろ。できるか? 二階の香木はどうやって手に入れたんですかって聞かれるよな?」
マキを睨みつける真那賀の顎に、マキの長い指が絡む。細い顎の曲線を、弄るように撫でる。
「お前に、迷惑はかけねえよ。ちょっとの間だ。な? 真那賀……」
指に力が入り、真那賀の口が僅かに開けられる。マキは、そこに口を近づけていった。
ったく、男ってのは女をたらし込むときも男をたらし込む時も同じだな。
ギギギ~、と、俺は遠慮なくマキのアキレス腱あたりにゆっくり爪を立ててやった。
「……影虎」
何だよ。
最初のコメントを投稿しよう!