転生

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 完全に陽の光が現われるまで、真那賀は見えないと言って歩き出そうとしなかったが、出勤するサラリーマンや学生が駅方面に向かう姿が見え始めた頃、ようやく重い腰を上げた。  猫の目線になると低すぎて、ここがどこなのかさっぱり分からない。帰る場所が分からないので真那賀の後ろについていこうとすると、さすがに猫が人の後ろを歩く姿は妙に思われると懸念したのか、真那賀は俺を腕の中に招いた。  面白いくらいに身体が丸まり、人の腕の中に収まる心地よさと言ったら、自然と喉を鳴らす習性が表に出てしまったほどだった。  はあ、極楽、極楽。 「皆さんそうおっしゃいますね。私も、生まれ変わったら猫になりたいですよ」  お前さん、抱き方が上手なんだ。 「それはどうも。まあ、私が大事にしているのは影虎の身体で、あなたではありませんが」  綺麗な顔して結構言うな……。  あの方を、思い出す。 「前世で心残りだった方ですね? 私で思い出すということは、男だったのですか」  そう。男だった。お前さんほどぞっとする美人ではなかったが、本当に、涼やかな、綺麗な人だったよ。  それでも凛として、人とは一線を画していた。  他人を容易に寄り付かせないために、お前さんのような口調で、さりげなく人を避けていたよ。 「……別にそんなつもりはありませんが」  ああ、気にするな。そう感じただけだ。  あの人が人を避けるのは仕方ないことだったんだ。     獄に、繋がれていたんだから。
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