転生

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 真那賀に抱かれながら進むと、ああもしかしたらここは根津かと気が付いた。根津神社方面に向かう道に心当たりがあったからである。  真那賀が戻った場所は、外観も古かったが、掲げられた看板も古かった。 「瀬尾香木店」。とは何ぞや? 「名前の通りですよ。香木……お香を扱っているんです」  ああ、お香か! お前さん、やたらいい匂いがするから、男の癖に浴衣に何をたいているのかと思っていたが、香木屋なら合点だ。  店の中は朝の光が容易に届かぬほどに、薄暗かった。  店の天井の灯りは白熱電球ではなかった。オレンジ色の間接照明を、真那賀は慣れた様子で次から次へと点けていった。暗い店内が、蝋燭をいくつも灯したように明るくなっていく。  古い造りなのだろう。天井が低い。店の左右の壁面には天井までの棚があり、店の入り口から向かって右側は一面、薬棚であった。一体いくつあるのか、小さい引き出しがびっしりと壁を埋め尽くしている。おそらく細かく香が収められているのだろう。  真那賀が最後の間接照明をつけた時、ざっと見る限り狭い店内でも十個以上の明かりが浮いていた。     
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