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転生
気がついたら、猫の身体になっていた。
ああ何てことだ。俺は、猫として生まれ変わってしまったのか。
あの時代から、ようやく生を受けたというのに、猫とは。
前世の悔いがこうも情けない姿を晒すことになろうとは。
こんな姿では、あの人に会いに行くことも出来ない。探すことも出来ない。
そもそも、あの方は、この現世に生を受けておられるのか。
あの時代を経て、あなたは私と同じこの時間に、生きておられるのですか。
「……もし、そこの御方」
しかも今は夜、月光しか色を判別するための光はないが、猫は猫でも黒猫ではないか?
なんと縁起の悪い!
「そう言わないでください。影虎の体の艶は、クロヒョウにも負けぬと飼い主としては思っているのですから」
何奴!
「その猫の飼い主でございます。申し訳ありませんが、私は鳥目で夜に外を歩くことが出来ません。これ以上遠くに行かれますなら、その猫の身体をお返しください」
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