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真那賀
気が付いた時には、真那賀の腕の中にいた。
俺を心配そうな目で、じっと見つめている。
俺は思わずスンスンと匂いを確認してしまった。そんな俺の様子を見て、真那賀は目を曇らせた。
おそらく、俺が意識を失っている時に、影虎の魂が戻ってきたと期待したのだろう。
ハイ、アサケンです。悪かったな、元に戻ってなくて。
抱き上げる腕を尻尾でパシパシと叩くと、真那賀は苦笑した。
お前さん、エロかった~。そう言うと、真那賀は俺の耳を少しだけ引っ張った。
よく見ると、先程と部屋が違う。
「二階です。私の寝室ですよ」
真那賀も白地の浴衣に着替え、僅かに髪が濡れていた。風呂に入ったのだろう。敷かれた布団の上に座り、膝の上に俺を置いている。
あのエロ男はどこに行った? 帰ったのか。
「ええ」
恋人なのか?
「そう見えますか?」
真那賀の手首は赤く染まっていた。擦れてしまった箇所を、そっと撫でるように隠す。
あんま、見えねえかもな。
好きでもねえなら、なんで好きにさせてんの?
真那賀は部屋の端に置いてあるナイロンの袋に包まれた物体に指を向けた。
大きさはまちまちだが、茶色の物体がゴロゴロと置いてある。
「香木です」
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