1 穀潰し無駄に生きる

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 一回鳴っても出ないからといって二回鳴らす。何という単純な発想だろう。宝くじが当たらないから二倍買いました。パチンコでスッたから倍額ぶちこみました。  そんなことをしてまともな結果が来るわけがない。ちょっと考えればわかる話なのにどうして自分の頭で考えないんだろう。  ピンポピンポピンポロピ・ピピピピピン、ピンピンピンポローンピピピ  なんだよこれ。いやまだ鳴り続けてるんだけど。僕はここへ来て恐怖を感じた。現代社会の病理により、カメラつきインターホンどころかインターホン自体がない安アパートだ。あ、家賃ってどうなるんだろう。払えないや。追い出されるとしたらそれも病理だ。  僕は窓を開けずに、何とかガラス越しに玄関が見えるように外を覗いた。動きはできるだけ緩慢に。窓の外から動く物体は発見されるおそれがある。危険な人ほどやたらに目ざといのだ。  ……あれ? 可愛い女の子?  可愛い女の子が、なぜあんな狂ったような鳴らし方をするんだろう。何かの間違いじゃないか?  僕は自分の目で確かめようと思った。  確かめる、というのはとても前向きな姿勢で、叔父さんやそのほか僕を嫌いな人たちも喜ぶ態度に違いない。そうも思ったから、僕は思わず玄関の扉を開けてしまった。 「中田慎一さんですね!?」 「……そうですが……」 「こんにちは! 私、宝田らめのです! あなたの炎上をプロデュースさせていただきます!」
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