炎上プロデュース少女 宝田らめの

２ 新たな社是によりあなたを平和的にプロデュースします

「あ！　いきなりそんなこと言われてもわからないですよね！　ごめんなさい！　私、いつも会社で説明の仕方が悪いって怒られるんです。なので、今日は頑張ってプレゼン資料を作成してきました！」そう言って当然のように玄関の内側にするりと入って座り込み始めた。段差のない安アパートだから座り心地は悪いとは思うが、物ともしない。
　ノートパソコンの画面には、『ＥＪメソッドによる新しい返済手法のご提案』というわけのわからない文字が並んでいる。返済？　嫌な予感がした。次の画面に移る。

「まず、中田様は……つまり、中田様のお母様ですね、あ、申し遅れましたが、このたびはご愁傷様でございました。お母様は、弊社に多額の借金をしておられまして。というわけで、息子さんである慎一様に、全額ご返済いただきたいと思っておるわけでございます。とはいっても、慎一様はほぼ無一文とお見受けしております。そうですよね？」

　そんな言葉と共に画面に浮かび上がったのは、『従来手法：ＭＪメソッド』と書かれた画面だ。さっきがＥＪメソッド、今度がＭＪメソッド。一文字違うだけ。とはいっても何の略称だかさっぱりわからない。
　いや、ＭＪメソッドはわかった。すぐ下にマンガっぽいものが描いてあったからだ。マンガっぽい、という言い方をするのは、見慣れた漫画とは何かが違って、〇や▽などを組み合わせた単純な図形と吹き出しだけで構成されていて、漫画編集部に持ち込んだらまず一発で落とされるだろうと思ったから。