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僕は成績は悪かったけど、警戒心は人一倍強いから、わかる。要するに言いくるめてるけど働くってことだよね。僕が働いて、「支払い顧客」とやらが給料をくれるからそれを全部返済に充てる。それだけの話を何か適当な言葉で包んでごまかしているように見える。
だから僕は言ってやった。
「嫌だ、と言ったら?」
「残念ながら、中田様はお客様ではございますが、弊社では人権を認めるようになったわけではありません。従いまして、もしお断りになるようなことがございますとぉ――つまり、EJメソッドを取ることができない……場合には、弊社も、リニューアル後も依然として資本主義に基づく営利団体でありましてぇ、旧来のMJメソッドに立ち返る、ということになります」
「それって」
「あ、さっきの腎臓です。お亡くなりいただく場合も」
「嘘でしょ」
やっぱりこういう綺麗な女の子が、恫喝なんてことをする、っていうのはどうしても信じられない。
「実はそんなこともあろうかと準備してきました!」
「え」
そんなことって何だろう。もしかして僕を殺害する準備だろうか。彼女はポケットから拳銃――でもなくナイフ――でもなく、スマホを取り出して電話をかけ始めた。
(お願いします)
それだけ小声で言った。
その瞬間、後ろの……ちょっと角を曲がったところから、かなりの巨体の男がにょきっと顔を出してピースサインをして、すぐに引っ込んだ。熊のような……というか、熊すら殺せそうな男だった。
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