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「頼むわ。出来るだけ苦しませたくねぇんだ。言う通りにしてくれ」
「代わってあげるよぉ。なんだかんだで情が湧いちゃったんだよねぇルスラン君。その顔見りゃ分かる分かるぅ」
現れたのはメリッサだ。メリッサもまた、瑠璃を殺す為に動いていたのだ。
「この子の覚悟決まるまで待ってあげるつもりだったんでしょう? だめだめぇ。覚悟なんて決まるわけないでしょ? こういうのはねぇ、ぱっとやっちゃうのが……優しさだよぉ? ルスランくぅん」
メリッサが狼に姿を変えて瑠璃に近付く。瑠璃は思考回路が停止しているのか、その場から動かない。
「おい! 勝手に……っ」
──チリン……。
鈴の音が園内に響いたと思った瞬間、ルスランの横を一匹の黒猫が走り抜けた。その黒猫を横目で見て、ルスランが目を見開く。
「メリッサ! 止まれぇ!」
「はい?」
「そのまま行ったら殺されるぞ!」
瑠璃を守るように、首に鈴を付けた黒猫が立ち塞がる。それを見たメリッサが息を飲み、人間に姿を変えて立ち止まった。
瑠璃も、目を見開いた。その黒猫が人に姿を変えたのだ。
「狼君、君は彼の護衛を止めたのかい?」
「なんで……あんたが、こんな所に」
「いいよ。それなら君のたすきは僕が受け取ろう。今からは僕が彼の護衛だ」
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