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「僕は気まぐれな猫。真面目な犬や掟に縛られた狼とは違う。何も怖いことなんてないよ」
瑠璃は少しだけクロを警戒しながらゆっくりと立ち上がる。そんな瑠璃を気にすること無く、クロは猫目を細めながら相変わらずニコニコ笑っていた。
「行こう、瑠璃君」
「……」
歩き出したクロに、瑠璃は渋々着いて行く。聞きたいことが多すぎて、何を聞いて良いのか瑠璃は分からずに居た。
「ふふ、警戒しすぎだよ。僕、君に背中を見せてるのに」
「ご、ごめんなさい……。もし本当にクロなら……前に俺のことをジュン、いや、シェパードの所まで案内したのは」
「ああ、それか。うん。案内したのは僕だよ」
「どうして」
クロは歩みを止めて振り返り、閉じていた目を開く。美しい琥珀の瞳を見て、ああ本当にクロなんだなと瑠璃はぼんやりそう思った。
「君がそう望んだからさ」
「え……?」
「君はあの時シェパード君を求めた。だから僕は君をシェパード君の元に導いた」
「よ、よく分かんないや」
「うん。それでいいんだよ瑠璃君」
ミステリアスにも程がある。正直クロが何を言っているのかが瑠璃には分からなかった。クロは再びニコニコと笑みを浮かべ、前を向いて歩き出す。
(あ、怪しすぎる)
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