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確かに瑠璃の知っているクロなのだろう。しかし怪しさ満点のクロに、瑠璃は戸惑うしかなかった。それなのに、不思議と安心感もある。懐かしいような、悲しいような、言葉に表せないような気持ちである。
「く、クロ」
「うん?」
「あの時、八つ当たりして……怒鳴ったりして本当にごめん」
「ああ。そんな事僕は気にしてないよ」
「俺はずっと気にしてた……」
「じゃあ今から気にしなくていいよ」
「……」
「そんなに落ち込まなくても大丈夫だよ。シェパード君もお母さんも無事だったんでしょ? 護衛だって狼君の代わりに僕が居る。何も問題なんてないよ」
「お袋の事も知ってるの……? なんで……」
「さっき言ったはずだよ。秘密だってね」
瑠璃は黙ってクロの後ろに着いて行くことにした。カランコロンという下駄の音と鈴の音が響く。真っ暗な道には瑠璃達以外誰も居ない。
クロはルスランより大分細身だ。力が強そうにも見えない。瑠璃より幾分背が高いとは言え、例えば今ガタイの良い暴漢が襲って来たら普通に負けるのではないかと思ってしまうような容姿である。ルスランとは何もかもが違う男だ。
「……やばい人来たら俺が守るから後ろに隠れて……」
「おや。僕頼りにされてない感じかな。ふふ、じゃあ怖い人来たら遠慮なく守ってもらおうかな。護衛とか言っちゃったけど、本当のところ僕は喧嘩苦手なんだ」
(やっぱり)
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