855人が本棚に入れています
本棚に追加
***
「ジュン……」
ジュンは点滴をしながらぐったりと横になっていた。瑠璃が声をかけるが、目を覚まさない。泣きそうな顔でジュンの身体を擦る瑠璃の肩に、梅吉は手を置く。
「そんな顔しなくても平気平気。命に別状はないからさ」
「……はい」
「極道さんから聞いたよ。例の狼事件に遭ったらしいね。君のお母さんも襲われたって聞いたけど」
「母は、なんとか目を覚ましました」
「そっか。それは良かった。それにしても……獣医としては複雑だなぁ」
梅吉は苦笑いを浮かべながらジュンを撫でる。
「俺、嫌いな動物いないんだよ。どの動物も好き。勿論狼もね。なんで狼が日本にいるのか分からないけどさ、捕獲されれば間違いなく射殺だろうね。知ってる? 今日本で起こってる狼事件のせいで、世界中が狼を危険視し始めてる。狼の排除運動をする人まで出てきちゃってさ。全く、嫌な話だよねぇ」
「……狼って、普通人を襲うものなんですか?」
最初のコメントを投稿しよう!