855人が本棚に入れています
本棚に追加
「人間から手を出さなければわざわざ出向いてまで襲ったりなんてしないよ。襲うとするなら生きる為。どの動物だって同じだよ。……でもなぁ……。今起こってる事件はそうじゃない。生きる為じゃなくて、ただ殺してる。普通に考えて有り得ない。間違いなく人間の手が入ってるだろうね」
ジュンが薄っすらと目を開き、瑠璃が慌てて名前を呼ぶ。するとジュンはピスピス鼻を鳴らし、尻尾を振った。声を出したかったが、側に梅吉が居た為それは出来なかった。
「お袋、目ぇ覚ましたから」
それを聞いたジュンは目を細めながら尻尾を振り続けた。
「……ごめん。俺……本当にごめん、ジュン」
ジュンの尻尾の動きが止まった。ジュンの背に顔を埋めてひたすら震えた声で謝罪する瑠璃。ジュンが痛む身体を動かすと、瑠璃は再び謝罪をして離れた。
「瑠璃が謝ることなんて、何もないよ」
喋ったジュンに瑠璃は表情を強張らせ、振り返る。梅吉の姿はなかった。その事に瑠璃は胸を撫で下ろし、視線をジュンに向ける。
「瑠璃ママ、助かって良かったね。俺、嬉しい」
「……うん」
「ねぇ瑠璃」
「ん?」
「俺、頑張ったよ」
いつもより少し弱々しい声でそう言ったジュンに、再び瑠璃が泣きそうな顔をした。
「俺、瑠璃の自慢? 俺がパートナーで、瑠璃良かった?」
「……」
ジュンは、純粋に褒められるのを待っていた。だが、いつまで待っても瑠璃は褒めてはくれない。辛そうな顔をするだけだった。
「瑠璃?」
「……俺さ」
「うん」
「俺、主人失格だな」
最初のコメントを投稿しよう!