855人が本棚に入れています
本棚に追加
その言葉に、ジュンは目を丸くして黙った。そんなジュンにもう一度、「ごめんな」と瑠璃は小さく言った。
「なんでそんな事言うの? 瑠璃は俺の自慢の主人なのに」
「俺はお前に酷い命令をした。絶対にしちゃいけないことだった」
「なんで? 瑠璃の命令、俺嬉しかった。瑠璃に信用されてるんだって思えた。酷くなんかない。瑠璃は俺を信用してくれる良い主人だよ」
「良い主人なもんか。あんな命令して」
「でも俺は」
「あんな命令、家族なら絶対にしない」
ジュンは瑠璃の顔を見上げながら黙り込んだ。
「……念の為、三日間入院な。退院したら、ご馳走作るから」
「……」
何も話さなくなったジュンの頭を撫で、瑠璃は「また明日来るから」と言って部屋を出て行ってしまった。
「……」
ジュンは瑠璃によって閉じられた部屋の扉を意味も無く眺めた。
「家族……」
先程瑠璃が言った言葉が、ジュンの頭でこだまする。遠回しに、お前のことは家族だと思っていなかったと言われた気がしたのだ。
(パートナーって、家族じゃなかったのか……知らなかった)
ジュンの中で、家族という言葉とパートナーという言葉は同じものだと思っていた。
(そういえば俺、瑠璃に家族って言われたことないや)
最初のコメントを投稿しよう!