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真夜中。ちりんと音がし、吟遊詩人が顔を上げる。
「大丈夫かい? 狼君に乱暴されたんでしょ? ごめんよ。君が巻き込まれるのは予想してなかったんだ。痛みに弱いのに、可哀想に」
「参ったよ。私、殺されるかと思った」
言いながらクスッと笑う吟遊詩人の横に、クロは腰掛けた。
「今出るしかなかったんだ。命令が変わったみたいでね。瑠璃を殺せって」
「そうらしいね。まぁ、貴方からしたら確かに出るしかないよね」
「うん。瑠璃を殺されるわけにはいかないから。結果、君を巻き込んでしまったんだけど。ほんとにごめんよ」
「私は大丈夫。勘弁してくれって、狼は頭を抱えて嘆いていたよ」
「彼も随分と苦労性だね。理不尽な下剋上にあって、犬に振り回され、挙げ句猫に邪魔され。僕だったら発狂するな。彼、短気そうに見えて実のところかなり忍耐強いよね。ちょっと同情しちゃうな僕」
「……それで、瑠璃色の彼に接触した感想は? 是非とも聞かせてほしいな」
クロは月を見上げて口角を上げた。
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