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瑠璃はジュンと共に、翠が入院している病院に訪れた。傷の治りは順調で、弱々しくではあるが声も出せるようになっていた。瑠璃はそんな翠にチケットを差し出す。
「あらぁ。なぁにこれ」
「チケット。商店街のクジで当たったんだ。退院したら、親父と行ってきなよ。七人分だから、友達とか誘ってさ」
翠は嬉しそうに笑いながら受け取ったチケットを眺める。そして、何かに気付く。
「あらこれ……期限付きよ瑠璃」
「え?」
「十日以内よこれ。過ぎたらこのチケット使えないわ」
「はぁ!?」
瑠璃はチケットを取り、観察する。すると、小さく「有効期限:受け取りから十日以内」と記載されていた。
「嘘ぉ!? こんなことある!? 普通もっと期間空けない!? 何このニート向けチケット! 信じらんねぇ!」
翠は瑠璃の様子を見て、クスクスと笑う。
「いいじゃない。行ってきたら?」
「いやいや……」
「ママ生八ツ橋食べたぁーい。あとあぶらとり紙も欲しいわ。あ、お漬物も。あと、可愛い和傘も欲しいし、簪も。あとねぇ」
ニコニコしながら欲しいのを語る翠に、瑠璃は困ったように笑う。
「そんなに欲しいものあるの?」
「ふふ、そうよー。ママ、強欲だから。瑠璃は優しい子だから、全部買ってきてくれるんだろうなぁー」
そう言ってチラッと瑠璃を見る翠に、瑠璃は溜息を吐いた。
「……欲しいの、全部紙に書いて」
「あら。行ってきてくれるの?」
翠は楽しそうに笑い、側に置いてあったメモ帳とペンを取った。
「ふふ、いっぱい頼んじゃおっと」
「う。お手柔らかに」
鼻歌を歌いながら機嫌良さそうに字を書く翠を見て、瑠璃が小さく笑う。翠は順調に回復に向かっていた。
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