第28話:風に負けない子

45/52

855人が本棚に入れています
本棚に追加
/1873ページ
 芽生が泣き止み、蘭丸に目を向けた。なんと、蘭丸が芽生に話し掛けたのだ。 「ラン……?」 「はい。ランです。大丈夫ですか?」 「ラン、しゃべれるの?」 「魔法がかかってるんです。だから、芽生さんにだけはお話出来るみたいです。他の皆さんに内緒ですよ? 芽生さんとランだけの秘密です」  蘭丸は、そう言って芽生の頬に流れる涙を舐めた。 「此処をゴールにしても、良いんです。芽生さんは頑張りました。どうしますか? 芽生さんが選んでいいんです」 「……」  芽生は暫く黙った後、鼻を啜って立ち上がった。 「ここ、ゴールじゃない」 「では、最後まで歩くのですね?」 「ん」 「そうですか……では、ランもお手伝い致しましょう。その袋を二つ、ランにください。芽生さんはその子犬を抱っこです」 「いいの……?」 「勿論」  蘭丸は和菓子がぎっしり詰まった袋を二つ咥える。 (うううう顎がぁ)  芽生が涙を拭き、再びしっかりした足取りで歩き出す。車で向かえに来た勇太は、その様子を見て通り過ぎた。 「芽生さんは凄いですね。ラン、芽生さんのお姉さんっぷりに吃驚です」 「めい、つよいから」 「ふふ。では、ゴールまでランとお話しましょう。ゴールしたら魔法が解けて、ランは話せなくなってしまいます」 「そうなの?」     
/1873ページ

最初のコメントを投稿しよう!

855人が本棚に入れています
本棚に追加