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芽生が泣き止み、蘭丸に目を向けた。なんと、蘭丸が芽生に話し掛けたのだ。
「ラン……?」
「はい。ランです。大丈夫ですか?」
「ラン、しゃべれるの?」
「魔法がかかってるんです。だから、芽生さんにだけはお話出来るみたいです。他の皆さんに内緒ですよ? 芽生さんとランだけの秘密です」
蘭丸は、そう言って芽生の頬に流れる涙を舐めた。
「此処をゴールにしても、良いんです。芽生さんは頑張りました。どうしますか? 芽生さんが選んでいいんです」
「……」
芽生は暫く黙った後、鼻を啜って立ち上がった。
「ここ、ゴールじゃない」
「では、最後まで歩くのですね?」
「ん」
「そうですか……では、ランもお手伝い致しましょう。その袋を二つ、ランにください。芽生さんはその子犬を抱っこです」
「いいの……?」
「勿論」
蘭丸は和菓子がぎっしり詰まった袋を二つ咥える。
(うううう顎がぁ)
芽生が涙を拭き、再びしっかりした足取りで歩き出す。車で向かえに来た勇太は、その様子を見て通り過ぎた。
「芽生さんは凄いですね。ラン、芽生さんのお姉さんっぷりに吃驚です」
「めい、つよいから」
「ふふ。では、ゴールまでランとお話しましょう。ゴールしたら魔法が解けて、ランは話せなくなってしまいます」
「そうなの?」
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