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「はい。ですから、沢山話しましょう」
「ランって、らんまるにいちゃんに声にてるね」
「ギクッ」
芽生は本当に強い子だ。もう、泣いていない。怪我をしている。痛いはずなのだ。なのに、痛いと嘆かない。しっかりと歩いている。
「その子、連れて帰るのですか?」
「うん。かうの」
これは飼う飼えないで揉めそうだなぁと、蘭丸が心で苦笑いをした。
「とうちゃんもかあちゃんも、ばぁばもじぃじも、ひぃばぁばもひぃじぃじも、すぐあきらめる子は、いきものかっちゃダメっていってた」
蘭丸が、強い瞳の芽生を見る。
「この子、さむいの。めいががんばれば、この子はあったかいお家にいれるよ」
「だから芽生さんは、最後まで歩くのですか?」
「うん。それとね、稲はつよい風がふいても、たおれないの」
文也はたまに、蘭丸に家族の話をしていた。文也は原田家の事を、“馬鹿”と“家族”を合体させて“馬鹿族”と読んでいる。大半が愚痴だ。だが、愚痴を言いながらも、その目と声は優しいものだった。
──こんな細いのに稲は強風に吹がれでも倒れね。おめぇも農家の子なら、向がい風ごどきでビィビィ喚ぐんでね……って、そればーっか。
文也の言葉を思い出し、蘭丸は目を細めた。
「素敵な家族ですね」
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