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初めてのおつかいは終わった。芽生は最後まで歩いた。
「げぇ! 何この犬!」
夜。帰宅した文也は、出迎えた見知らぬ犬にギョッとした。
「おう、お帰り」
「ただいま……じゃなくって、何この犬!」
「いやぁ、芽生が連れで帰っで来でよぉ」
「はぁ!? どうすんの!? なに、これ俺が飼う流れなの!?」
裕也は子犬を抱き上げ、へらっと笑う。
「いんや。家で飼う。芽生が根性で連れで帰って来た捨て犬だ」
「……え。簡単に決めていいの……?」
「誰も文句さ言わねぇべ。芽生が自分で面倒見るって言っでんだもの。芽生は間違いなぐ責任持っで世話する。自信持って言える。んだからよぉ、明日ペットショップさ連れでって。新幹線さ乗せんのにさ、ケージ必要だべ」
文也は、確かにあいつらは誰も反対しねぇべなと思いながら、靴を脱いでリビングに向かう。
「ふみやおいたん!」
「おおー……って、なんだその手!」
「ころんだ!」
「オイオイ気を付けろよぉ。お前女の子なんだからさ」
言いながら、文也が芽生を抱き上げた。
「どうだった? 買い物」
瑠璃から最後まで頑張ってたと連絡を貰っていた為、知っている。が、敢えて知らないふりをして本人に問う。
「さいごまで、できた! ぜんぶ、買えた!」
「おお凄ぇ。やるじゃんお姉ちゃん」
「へへへ!」
文也が芽生を降ろすと、芽生は「ふみやおいちゃんにほめられたよー!」と、裕也の元に掛けていく。文也はまだ犬のままの蘭丸に近付き、頭を撫でて小さく「ありがとな」と呟いた。
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