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「ん?」
「稲は強い風が吹いても倒れないって」
文也は「ああ」と言って笑い、咥えた煙草に火を点けた。
「そうそう。うちの奴ら、何かあるといつも言うからさ。それ」
文也はテレビを点け、適当にチャンネルを変える。
「ガキの頃はこんな家嫌だとか思ってたけどさ、まぁ……今はあの家に産まれて良かったと思ってるよ。絶対言ってやらねぇけど」
「言えばいいのにぃ」
「絶対やだ。爆笑されて終わる。俺には分かる。あいつらそういう奴だもん」
「ご主人様って、どんな子供だったんですか?」
文也は紫煙を吐きながら、こっ恥ずかしそうに頭を掻いて目を伏せた。
「あー……んー……そうだな。……三兄弟の中では一番甘ったれ……だったと思う。あいつらが逞しすぎるんだよ。三兄弟の中でってだけで、俺は普通だぜ。綺麗なお姉さんが大好きな子供でした」
「歪み無い! 流石ですご主人様」
「そういうお前は?」
蘭丸が笑顔で硬直してしまった。何か黒歴史があるに違いないと思った文也は、ニヤニヤしながら肘で蘭丸の脇腹を突付く。
「おーい。なぁに隠してやがんだ。クソガキだったのか? 聞いてやろうじゃねぇかお前の黒歴史。……蘭丸?」
「あ……」
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