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第29話:愛を知らない人
きらびやかな会場で、ドレスや着物を着た女達、高級なスーツを着た男達が上品に酒を嗜みながら話をしている。著名人、大企業の社長、会長、財閥家達が集うパーティが行われている。とある財閥家が企画し、こうして選ばれた人間達がパーティを楽しめる。その中に、旭も居た。旭はシャンパンを飲みながら、とある中年の女優と談笑していた。
「今年から立川社長も招待されるのね」
「立川社長?」
「あら、旭君ご存知無いの?」
女優の視線の先に、旭も目を向ける。そこには、イタリア製のスーツを身に纏った眼鏡の男がいた。この場に招待された者の中では若い方だ。
「まだお若いように見えますが、社長さんなのですか? どこの企業さんでしょう」
「ジェルモッリオという株式会社をご存知?」
「あ、はい。今かなり成長しているIT関連の会社ですよね? 先日大ニュースになりましたね。イタリアの電子系会社とニューヨークのWeb系大企業を同時に買収したとか。僕もチラッと覗きましたが、株価の上がり方がえげつなかったです」
「彼が、そこの社長よ」
旭が男を見ながらギョッとする。
「え!? あの会社、あんなに若い方が社長だったのですか!?」
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