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街中で、勇太と銀次が歩いていた。その手にはお好み焼きとたこ焼きの材料。
「やー。お好み焼きにたこ焼き。久しぶりやなぁ」
「せやな勇ちゃん! 二日ぶりのお好み焼きとたこ焼きやな!」
「二日も食ってなかったんやー。やっぱ主食は毎日食わなあかんわ」
「今日は僕が作るで!」
「作れるんかお前」
「作れる! ……多分……」
「失敗したらド突くで。……ん?」
勇太は眉を寄せ、目を細める。銀次はそんな勇太に首を傾げ、正面を見た。
「う……あかん。僕より強い負のオーラ纏ってるやん。僕よりって相当やで」
「自分で言うなや。お前のそういう所があかんねん」
俯いたままフラフラと今にも倒れそうな状態で少年が歩いてくる。言わずもがな、スズだ。その先には電柱。
「ちょいちょいちょい! 前見て歩かな、自分ぶつかるで!」
勇太の声に、スズが顔を上げる。そして銀次を見た瞬間、目を大きく開いた。それは銀次も同じである。そんな銀次に、勇太が察する。
「まさか」
「勇ちゃんお分かりいただけただろうか……っ」
「犬か……っ」
銀次は頷いた後、スズに微笑みかける。しかしスズは応じること無くプイっとそっぽを向いてしまった。
「えっと……こんにちは、柴犬君」
「柴犬!? 柴犬なん!?」
勇太が目を輝かせて食い付いた。何を隠そう、勇太が一番好きな犬種が柴犬なのだ。昔飼っていた犬も柴犬だった。勇太に近付かれ肩を掴まれたスズは、ビクリと身体を跳ねさせる。
「な、なんだよ! 勝手に触るなバカ! パンが狙いか!? このパンはな、真尋のパンなんだぞ! だめぇ!」
「自分柴犬なん!?」
「はぁあ!? な、なんで分かったんだ! 怖いんだぞお前! あっち行けぇ! グレデンか! そこに居るグレデンが教えたのか! 裏切り者ぉ!」
「え!? 僕裏切り者!? ごめんなさいっ」
勇太は嬉しそうな顔をし、スズの肩をポンポンと叩いた。
「なぁなぁ、今から一緒にお茶行かへん?」
「へ」
「勇ちゃん、柴犬君をナンパするの巻」
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