第29話:愛を知らない人

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***  勇太はスズを連れていつもの喫茶店にやって来た。  旭と涼がカウンター席に座りコーヒーを飲んでいた。スズを見た涼の「柴犬かよ」という言葉に、旭が目を丸くする。ユキも皿を洗いながら「柴犬ですね」と呟いた。スズはユキと涼の視線を受け、サッと銀次の背後に隠れた。その様子に、銀次は苦笑いを浮かべる。 「大丈夫。怖ないでスズ君」 「べ、別に怖くないぞ。俺は強い子なんだからなっ。柴犬はロットワイラーの百倍強いんだぞ!」 「ああ? なんだって柴コロ」 「そ、そんな顔しても全然怖くないんだからなバカ!」  スズは銀次の隣に座り、口を結ぶ。どうやら温厚な銀次の側が落ち着くらしい。勇太はデレデレした表情でスズを見て、「はぁスズちゃんかわええ」と繰り返している。 「可愛くない! 俺は格好いいんだぞ!」 「はぁ柴犬かわええ」 「むぅうッ!! お前の主人なんだかムカつくんだぞ銀次!!」 「勇ちゃんは自分の感情に素直なだけやから許したって……」  好きなものを頼んで良いと勇太に言われたスズは、メニューと睨めっこしてヨーグルトスムージーを頼んだ。 「えっと、スズ君は主人居るの?」  銀次の言葉に、スズは大きく頷いた。     
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