第29話:愛を知らない人

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*** 「あ、スズ君!」  数日後、雑貨屋で声を掛けられスズが目をやる。銀次である。 「奇遇やなぁ。スズ君も雑貨屋好きなん? 僕も僕も。見てるだけで楽しいよね」 「別に。なんとなく、入ってみただけだし」  そう言ってスズはプイっと顔を背ける。銀次は少しだけ困った笑みを浮かべ、スズの肩を優しく叩く。 「良かったら、僕と今から遊ばへん? 遊ぶ言うても、ただのお散歩とお買い物やけど」 「え……」  スズは驚いた表情で銀次を見上げた。そんなスズに、銀次は柔らかく微笑む。 「付き合うてくれへん? 勇ちゃんお気に入りのマグカップ壊してもうたから、ええのないかなぁって、探してたところ」 「お……俺も……」 「うん?」 「俺も……真尋にマグカップ買ったら、喜んでもらえるか……?」  もじもじしながら言うスズに、銀次は笑顔で頷いた。 「きっと喜ぶで」 「ん……。じゃあ、付き合ってやっても別にいいんだぞ」 「へへ。おおきに。ほな、一緒にええの見つけよか」 「ん!」  約百五十五センチと、約二メートルが並んで歩く。かなり凸凹な組み合わせだ。デカとチビ。なかなかに目立っていた。 「真尋兄さんはどないなものが好きなん?」     
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