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「雰囲気いいですね。流石旭さん」
「気に入って貰えて良かったです」
随分と洒落たバーのカウンター席に、ドーベルマン主従、ロットワイラー主従が並んで座る。客数は少ない。他に二人の紳士が仕事の話をしながらテーブル席で飲んでいる程度だ。それも当然で、このバーは気軽に飲みに来られる場所ではない。会員制のバーである。入店するには、会員であること、その会員の連れであることが条件の高級バーだ。旭はこのバーの会員である。入会費まさかの百万越えだ。
「てめぇ浮いてんぞヘタレ野郎。みっともねぇからキョロキョロすんじゃねぇ」
「う、うるせぇ」
テツは落ち着かない様子で出された高級バーボンを口に含み、渋い顔をした。どうやら口に合わなかったらしい。そんなテツの表情を横目で見て、春斗がクスっと笑った。
「苦手?」
「いや、その……飲んだことねぇから、慣れてねぇというか……」
「そっか。シャンパン、一口飲んでみる?」
差し出された春斗のグラスを持ち、テツは口付ける。が、再び渋い顔。
「やっぱりテツの口には日本酒が合うんだね」
「ん、んん……」
一人の客が入店した。旭は入り口に視線をやり、目を丸くする。
「あ。真尋さん!」
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