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「はい。行きつけのカフェがあるんでそこで。まだでしたら春斗さん達もどうです?」
「いいんですか?」
「勿論」
瑠璃についていく春斗の服を掴み、テツは首を横に振る。気まずいのだ。
「どうしたのテツ。行くよ」
「う……春斗がそう言うなら」
連れてこられたカフェに入った瞬間、テツは頭を抱えたくなった。
「あああ! ドーベルマン!」
ジュンの言葉に皆が振り向く。そこにはジュンと麗奈と弥助、それから葵もいた。勿論、ユキも。
「貴方か。どうも。貴方が怪我をさせた葵の犬です。三針も。三針も三針も三針も縫いました。どうしてくれる……っ」
「す、すまねぇ」
「ユキー。やめなってば」
「だって葵」
麗奈が、キラキラした目でテツを見ている。テツはその視線に気付き、目を逸らした。
「よかった! 本当によかったです!」
「あ、あん時は世話になった。怒鳴ったりして悪かった」
「いいえ、いいえ! ちっとも気にしてないです! ……もう一度、人を信じてみる気になったんですね」
「ああ」
テツは春斗を見る。そしてぎこちなく笑った。
「春斗は俺を捨てない。俺を捨てて後悔するのは春斗だから」
春斗はにぃっと不敵な笑みをテツに向けた。
「言ってくれるね」
「だって、春斗は俺の価値を分かっててくれるんだろう?」
<第5話に続く>
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