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「ほら、解いたぞ。もう自由だ。好きな所へ行け」
「でも……」
「雨が酷いから暫く此処にいろ。雨が止んだら弥助に見つかる前に早く出ていけ。また地味な拷問されたくなければな」
「あの、キーキーのやつ……」
「そうだ。万が一弥助に見つかったらこう言え。お前の主人が縄を解いたのだと。そう言えば奴は手を出さないはずだ。さて、俺は寝る。じゃあ、達者でな」
出ていこうとする和希に、アドルフはこう言った。
「……あ、有難う……」
「礼を言われる事ではない。今回、弥助はちょっとやりすぎだ。悪かったな」
「……ん」
「元気でな」
「有難う……」
夜が明けた頃には雨はすっかり上がっていた。もうアドルフの姿はない。
すっかり拗ねて腕を組みながらそっぽを向いているいる弥助を見て、和希は頬杖をつく。
「貴様一体いつまで拗ねている」
「だって若が」
「俺は謝らんぞ」
「貴重な情報源だったのに。若は何も知らないから」
「ならば俺に言うか? 貴様が隠していること全て。それを聞いて納得したのであれば俺は貴様に謝るぞ」
黙る弥助を見て、和希は意地の悪い笑みを浮かべる。
「そーれ見ろ。言えないではないか。寧ろ深く詮索しない主人に感謝してほしいくらいだぞ弥助ぇ」
「……流石俺の主人」
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