第6話:知るべき痛み

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 向かいに座る癖っ毛の眼鏡男は冷めた目で突っ伏す男を見る。 「ちょっとお腹痛い。(ふみ)君、イライラするから平手打ちさせて」 「なんたる理不尽」  赤茶毛の髪の男は原田文也(はらだ ふみや)。元々ドキュメンタリー番組のナレーションをすることが多かったナレーターだったのだが、ちょっとしたことが切っ掛けで今や有名人だ。女性受けする容姿と巧みなトーク術が買われ、あらゆる番組でMCを務めている売れっ子である。  そしてもう一人が芦屋雅彦(あしや まさひこ)。文也とは高校からの付き合い。同級生である。彼もナレーター業をしている。それでけではなく、友人から誘われてなんとなくで入った劇団で演技の才能が開花。しかも悪役限定。それがあらゆるお偉いさんの目に止まり、今や声優、演劇でも活躍している。無論悪役限定。評論家は「まるで悪魔に憑依されたかのような演技をする」と言っているが、文也曰く「こいつは演技なんかしてない。素だ」だそうだ。     
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