第6話:知るべき痛み

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 そんな売れっ子二人、しかも同級生。女好きでトークスキルがずば抜けている文也と、誰に対しても毒を吐き淡々と語る根暗キャラの雅彦がタッグを組むということで話題を呼び、大人気のラジオなのだ。芦屋の“芦”、文也の“文”をとって番組名はあしぶみ。文也の男リスナーに対するあからさまな塩対応も雅彦の超がつく程のリスナーに対する毒舌も、リスナーは楽しんでいるらしい。罵られたくてわざと残念なメールを送るリスナーもいるくらいだ。 「雅彦お前この後暇?飯行かない?」 「暇じゃない。レンタルしてきたエログロ映画鑑賞するから」 「左様ですか」 「左様です」  文也は立ち上がり、女性スタッフに笑顔で近寄る。 「この前グルメ番組のナレーションやったんだけどさ、近くに良い店あるらしいんだよ。君さえ良ければどう? 御馳走するよ」 「えっと、まだ仕事が」 「えー」 「す、すみません」 「いいよいいよ。頑張り屋の子猫ちゃんも可愛いなぁ。ところで、連絡先とか」 「文君きもい。僕ゲロ吐きそう。(ちり)となって消えてほしい。ほんと御願いします。消えてください。一生の御願いだから。二百万払うから」 「そんなにかよ!」 「うん」  文也は溜め息を吐き、サングラスをかける。そしてスマホで連絡帳を見ながらスタジオを後にした。連絡帳の中身は95%女の名前。 「もしもしアユミちゃーん? 今暇ぁ? えーマジかぁ……了解了解。またね。えーっと次は……もしもしー? あ、ユリちゃん? そうそう文君。何してたの? え!? 旅行!? あー……そう。オッケーオッケー楽しんでね。……もしもーし、ハナちゃん?お疲れー。今空いてる?」     
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