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(なんだこの犬。人間みたいな反応して。というか大丈夫かこのじいさん。詐欺とか)
なんだか普通に心配になってきた文也。
「それ、大丈夫なんですか? 本当に」
「それ、とは?」
「いつも来るっていう青年」
老人は声を上げて笑う。まさかの反応に、文也はぎょっとした。
「もしかして、その青年が詐欺師だと?」
「……はい、まぁ……」
「ないない。有り得ん。詐欺師が一年以上もこのジジイに尽くすわけがない。詐欺師ならとっくに盗るもの盗って終わりだろう。それに……もう老い先短い。毎日ああやって一生懸命やってくれているあの子になら、俺の全てをやっても構わないとさえ思ってる。それくらいには、有難く思ってる。彼がいなかったら俺は死んでいる。悔いがあるとすれば、あそこまでやってくれるその青年の顔を知らずに逝くことだな」
文也はもう何も言えなかった。詐欺師じゃなかったとしたら、その青年は一体なんなのか。盲導犬協会の者でないことは確かだ。だとしたら、何の為に。
(世の中分かんねぇなぁ)
ラブラドールが古い一軒家の前で立ち止まる。
「ああ、着いたか蘭丸」
「ワン!」
「君もすまなかったね。どうも有難う。助かった」
「いえ……」
「さ、中に入ろう蘭丸」
文也は家に入る老人とラブラドールを見送った後、暫く立ち尽くす。
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