第6話:知るべき痛み

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***  数週間後、文也は洋食屋の前で機嫌良さそうに女と別れた。どうやら本日は釣れたらしい。 (そういや最近マミちゃんと遊んでねぇな。明日の夜にでも……あ、いや、明日はアイちゃんと同伴するって約束してたっけ。……ドンペリ十本入れたら一発ヤらせてくれるべか。でも待てよ。アイちゃん多分彼氏いるよなあの感じ。ちょろそうなのはユイちゃんだし、なんか処女っぽいし……ユイちゃんも指名しようかな。大丈夫だよユイちゃん。お兄さん処女面倒臭ぇとか雅彦みたいなこと絶対言わないし。寧ろ好きだし。お兄さんはベッドの上でも優しいからねーって、……んん?)  歩きながら最低なことを考えていれば、見たくないものを見てしまって文也は硬直する。  物陰にはラブラドール。口にゴミを咥えている。 「え……お前」  文也が声をかけると、ラブラドールは大袈裟なくらい身体を跳ねさせて振り返った。 「あれ? お前……いやいやいや、違うよな? え? 嘘。マジで? お前……蘭丸……じゃ、ないよな」  俯いてしまうラブラドールに、文也は確信した。この無駄に人間みたいな仕種をするラブラドールは蘭丸であると。 「は!? ちょ、ええ?何が……」     
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