第6話:知るべき痛み

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*** 「番組からのお知らせは以上かな。あ。文君なんか言いたいことあったんだっけ」 「ああ、そうそう。実は今ラブラドール預かってるんだけどさ。里親募集してて。そこでリスナーの皆にお願いなんだけど、是非我が家に! って人がいたら番組宛にメール欲しいんだわ」 「ラジオで里親探しとか」 「プロデューサーにちゃんと許可もらったもんね」 「無能プロデューサー」 「お前なんか降板させられろ」  そう、文也は蘭丸の里親探しに自分の知名度を使ったのだ。張り紙やネットで探すよりうんと早いと。雅彦は呆れていたが、効果は抜群だった。番組終了前に既に番組宛に「自分が引き取りたい」というメールが何通も届いた。番組終了後、届いたメールを見てどや顔する相方に、雅彦は舌打ちする。 「うざ」 「ほれ見ろ雅彦氏。どうよこれが文君の力だぜ」 「塵となって消えてほしい」 「またそれか!」  文也は内心ガッツポーズ。これで一件落着になりそうだ。 「ん?」  文也は一通のメールに目を止める。明らかに他のメールと違うのだ。こんな短時間でよく打てたなと感心してしまうくらいの長文だ。  内容はこうだった。自分は犬が大好きであること。今まで犬を何匹も飼ったことがあること。犬に関わる仕事をしていたということ。自分の人生にとって犬は必要不可欠な存在であるということ。それらがぎっしりと書き込まれていた。犬にかなり思い入れがあるらしい。 「……この人なら……」  文也は連絡する為、記載されていた電話番号を自分のスマホの通話画面に入力する。 「まじで。決めるの早くない? いいの?」 「イケるイケる」  文也が電話をかければ、すぐに相手が出た。 「あ、もしもし、会田さんでお間違いないでしょうか。原田文也です」
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