第6話:知るべき痛み

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***  里親はすぐに見つかった。あの長文メールをくれた人物に決まった。相手は男だったがまぁいいだろうと文也は思った。すぐにでも引き取りたいと言われたが都合が合わず、引き渡しは三日後になった。  文也は蘭丸を連れ、待ち合わせの場所へ向かう。向かった先は、文也のマンションからそう遠くない公園だ。 「会田さん?」 「あ、初めまして。本当に原田文也さんが自ら連れて来てくださるなんて思っていなかったので驚いています」  公園にはもう既に里親が待っていた。文也より少し上か、同じくらいか。穏やかで人の良さそうな男だった。 「こいつが蘭丸です」 「ああ、この子が。とても綺麗なラブラドールですね」  男が蘭丸の前でしゃがみ込み、優しく撫でる。 (うん。大丈夫そうだな。優しそうな人だし。こいつ、攻撃性もないし……問題ねぇだろ。うまくやれそうだ) 「蘭丸のこと、よろしくお願いします」 「はい。大事にします。有難う御座いました」 「此方こそ有難う御座います。じゃあ、俺はこれで」  元気でなと文也は最後に蘭丸の頭を撫で、その場から離れた。男は文也を見送った後、蘭丸に微笑む。 「一緒に帰ろうか。お家」     
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