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文也が蘭丸を連れてやってきたのは、ジュンも世話になった坂本動物病院だ。時間外でも対応可と、携帯電話番号が記載されていたのだ。こんな時間に悪いなと思いながらも電話をかければ、思いっきり寝起きの声で梅吉が電話に出たのだった。もう二時半過ぎにも関わらず、起こされたにも関わらず梅吉は笑顔で迎える。額には冷えピタ。眠気覚ましなのかもしれない。
「あら、芸能人」
「こんな時間にすみません」
「いいのいいの。で、患者は……」
ヘラヘラしていた梅吉だったが、蘭丸の怪我を見て表情を険しくする。
「この怪我は……どうしたの」
「よく分かんないです。事故かなって」
「事故ねぇ。……事故ではこんな傷は付かないかなー」
「じゃあ、事故じゃないんですか?」
「うん。多分虐待だね」
文也は目を見開く。
「この傷は明らかに刃物で切られた傷だもの。今からレントゲン撮るけどさ、足もトンカチかなんかで思いきりやられたんだろうね」
痛かったねぇ。怖かったでしょうと梅吉が優しく蘭丸を撫でる。
「……そんな。凄く、優しそうな人だったのに」
「この子の飼い主に心当たりでも?」
文也は頷く。想像もしていなかった事実に、文也の声が震えた。
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