第6話:知るべき痛み

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***  男は逮捕された。駆け付けた警察も、あまりの光景に暫く唖然としていた。この件はニュースでも取り上げられ、あまりにも人道から外れていると非難の声が相次いだ。が、中には「どうせやるなら動画あげろよ」「たかが犬猫殺したくらい何の問題が?」「殺したくなる気持ちも分かる」「あいつら害獣じゃん」「ただの駆除でしょ?」という声もネットではちらほら上がっていた。  残念だが、これが現実だ。  カランとカフェの扉が開く音がした。 「いらっしゃい、ジュン……と」  ユキは蘭丸の存在に首を傾げる。 「聞きましたよジュンさん。手、随分ぱっくりやったんですって? いやー、男前度上がりましたなー……え」  弥助は蘭丸を見て表情を強張らせる。蘭丸は少し目を丸くした後、明るい笑顔を浮かべた。 「初めまして。蘭丸と申します」 「ユキです」 「あー……弥助です」 「同じ存在と会うのは、ジュンさん以外では初めてです! よろしくお願い致します!」 「蘭丸と俺仲良し!」 「はい! 仲良しです!」 「へへ」 「えへへ」  弥助は二人の様子に、安堵の息を吐く。 「どうかしましたかダメデスヤン」 「いえ何も。というか普通に言いやがったな今」  弥助はコーヒーに口づけ、蘭丸を見る。その視線に気付いた蘭丸は、にこっと人懐っこい笑みを浮かべた。 (ああ、良かった。何も知らない顔だ) <第7話に続く>
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