第1話:初めてのパートナー

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***  それから二週間が経った。  もうジュンは居なくなったと言うのに、弥助達は変わらず瑠璃に良くしてくれる。弥助曰く、これも何かの縁ですから、らしい。極道はもっと怖いものだと思っていたのに、弥助達の存在があってそんなイメージがなくなってしまった。  前と変わらない生活が戻ってきた。ただそれだけだ。 「腑に落ちない顔をしているね」  久々にあの神社に足を運んだ瑠璃。そして当たり前のように居るあの不思議な男。瑠璃が心の中でスナフキンと呼んでいた男だ。スルーしたかったのに、声をかけられたら無視するわけにはいかない。 「お久しぶりです」 「最近見かけなかったから寂しかったんだよ」 「毎日此処へ?」 「此処には話し相手もいるしね。何より、あまり人が来ないから楽なんだ」  やはり変わっている。謎だ。 「で、何かあったのかな? 私で良ければ貴方の話を聞こう」  思い出した。この男が変なことを言った日に、ジュンと会った。あの時男は言っていた。犬が大好きになると。 「お兄さん……何者なんですか」  男はパラパラと本を捲り、そして閉じる。思わず見とれてしまうような、綺麗な笑顔で。瑠璃はゾッとした。全てを見られているようで。 「私はただの吟遊詩人さ。それ以外の何者でもない」  普通なら、何痛いこと言ってんだこいつと思うところだ。だが、この男は普通じゃないと瑠璃は感じたのだ。何が普通じゃないかなんて説明できない。ただ、そう感じた。 「犬は好きになれたかい?」  恐怖を感じ、瑠璃は言葉を返さず参拝もせず来た道を早足で引き返した。 「あら、逃げられてしまった。私、そんなに怖かったかな?」  男は草陰にそう問いかける。すると、ちりんと鈴の音が響いたと同時に「ふふっ」と誰かがおかしそうに笑った。 「そうか、怖かったか……次は気を付けよう」
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