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「えええ……これまたどういった心境の変化で?」
沢田組本部。弥助が戸惑うのは無理もない。ジュンがどこに行ったか、知っていたら教えてほしいと瑠璃に頭を下げられたのだから。
「あのねぇ、なにがあったか知りませんがやめときなさいって。厳しいこと言うようですが、気まぐれで犬を振り回すことだけはやめていただきたい。人の気まぐれで拾われたり捨てられたりなんて犬としては堪ったもんじゃない」
「分かってます」
犬を甘く見るなと説教しようとした弥助だったが、瑠璃の目を見て止めた。そして深い溜め息。
「なんだって急に……」
「昔、凄く悲しいことがあって。俺、猫に八つ当たりしたことがあるんです」
「ええ、それが何か?」
「あの猫は、もう俺の所に来なくなった。未だに後悔してます」
「成る程? つまり、今回もジュンさんを追い出したことに後悔していると」
「いえ」
瑠璃の返事にガクッと弥助が肩を落とす。
「後悔していると言ったらそこじゃなくて、あの時あいつを拾ったことです」
「おかしな事言う人ですなぁ。それでなんで探そうとするんです」
「だって、拾った瞬間に責任は発生してるから」
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