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無論、大人しく帰るわけがない。瑠璃は瑠璃で捜索していた。とはいえ簡単に見つかるはずもなく。気が付けば人通りが殆どない。夢中になっていて気が付かなかった。もう深夜の二時過ぎだ。
(そろそろ引き上げないと……)
瑠璃は硬直する。近くの草陰からガサゴソと何かを漁る音。
ジュンの事しか頭になかった。だから警戒なんてなかった。瑠璃は躊躇わずその草陰に向かった。
「あ……」
目の前には痩せ細った犬。瑠璃が此方に来るのを察していたのか、向き合って牙を剥き出しにして唸っていた。
シェパードじゃない。ドーベルマンだ。ドーベルマンの野良だ。
後退るがもう遅い。ドーベルマンは瑠璃を攻撃する気である。ドーベルマンが瑠璃に襲いかかろうとした次の瞬間だった。
「帰れって言ったでしょうが!」
猛スピードでダルメシアンがドーベルマンに体当たりをした。弥助だ。弥助は通常のダルメシアンよりだいぶデカい。痩せ細った身体には結構なダメージだったらしく、ドーベルマンはふらつく。ろくに食べることが出来ずに弱っているのだ。肋骨がくっきり浮き出ている。栄養失調になっている可能性が高い。そんな状態だった。
「あんた……テツさんだな?」
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