第1話:初めてのパートナー

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「早く……帰った方がいいよ。暗くて、危ないよ。変な人が出てきたら大変だよ。早く寝ないと、明日疲れちゃうよ」  瑠璃は俯いて拳を握り締める。  ジュンは犬だ。人に姿を変えられるから、こうして言葉を発する事が出来る。他の犬には出来ないことだ。  テレビに映ったあのシェパードもこうだったのだろうかと瑠璃は思う。捨てられても尚恨み言は言わず、自分を見捨てた主人達の身をこうやって案じていたのだろうか。最期の時まで、自分を裏切った主人達を想っていたのだろうか。 「犬って、ほんと馬鹿」 「え。あ、ご、ごめん。でもね、俺が馬鹿なだけで、犬は馬鹿じゃないよ」 「馬鹿だよ。ほんと、馬鹿」  涙が出そうになる。本当に馬鹿みたいに優しい生き物だ。 「特にお前は極めた馬鹿。ほんっと困る」 「う……うん」 「それを承知の上で言う。……俺のパートナーにならないか」  ジュンが瑠璃を見たまま固まる。だから瑠璃は言葉を変えてもう一度言う。 「俺のパートナーになってほしい」  ジュンが俯いて、震える。 「……俺、また瑠璃を困らせちゃうかもしれない」 「知ってる」 「俺は馬鹿だから、弥助のおっさんみたいにはなれないし」 「俺は弥助さんじゃなくてお前に言ってるんだよ。……返事は」 「でも、なんで。俺……あんな」 「お前に死んでほしくないからだよ」     
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