第1話:初めてのパートナー

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 ジュンは顔を上げる。 「何をしてでも生きたいって、お前言ってたじゃん。生きていたいんだろ? 生きづらくてしかたないだろ、人間だらけのこの世界は」  シェパードの姿から、人の姿に変わる。現れた顔は、鼻水とヨダレと涙で汚かった。つくづく、人間は便利だと思った。犬の姿のままじゃ、こんなに泣いているだなんて分からなかった。 「俺、ちゃんと生きたい」 「うん」 「死にたくない、殺されたくない」 「うん」 「俺、こんなだし、なにも出来ないし、それでも瑠璃が、こんな俺の主人になってくれるって言ってくれるなら」 「うん」 「瑠璃の犬として、生きていきたい」  瑠璃は右手をジュンに差し出す。なんの事か分かっていなかったジュンだが、握手だと知り慌てて瑠璃の右手を握った。鼻水だろうかヨダレだろうか、ぐちょっとした手の感触に「うっ」と唸りながら瑠璃は苦笑い。 「そういうこった。これからよろしくな、ジュン。もう追い出したりしねぇから。今日からあの家がお前の家だ」 「うん……うんっ!」
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