第1話:初めてのパートナー

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*** 「瑠璃さぁん! ご無事か!?」  階段を降りていれば、弥助の声。 「弥助さん! す、すみません! 今から弥助さんのところに行こうと。ほんとすみません!!」 「あー……全然大丈夫そうですね。上手く纏まったようで何より」 「弥助のおっさん! 俺、瑠璃の犬になれたよ! 野良犬じゃなくて、瑠璃の犬になったんだ!!」 「そりゃよかった」  弥助は人の姿になり背伸びをひとつ。そして欠伸。もう三時過ぎだ。 「弥助さん、本当にご迷惑をかけました」 「ま、こういう振り回され方は若のお陰で免疫ついてるんでね。お気になさらず。さて、弥助は帰りますよ。ジュンさん、これからは瑠璃さんが危機の時はあんたが身体を張って守るんだ。いいな?」 「うん!」 「よろしい。それではおやすみなさい」  それぞれが、それぞれの居場所に帰る。静かになった神社には、鈴の音がひとつ。 「貴方はこれで良かったの?」  いつも階段下にいる男が、鈴の音に向かって話しかけた。 「勿論さ。瑠璃が望んだことだからね。僕はこれでいいんだよ」 「そう。貴方がそれでいいなら、私も何も言うことはない」 「僕を気にかけてくれるのかい?」 「それはそうさ。だって貴方は、私がここに来て初めて出来た友人なのだから。それに、私の主は少々貴方に興味があるようでね」 「ふふ、僕のことはいいよ。犬を観察しなよ。きっと楽しい歌が作れるよ」 「そうだね。まだ始まったばかりだからね」  男は本を開き、サラサラと何かを書いていく。書き終えると一息吐き、「では、またね」と夜の闇に姿を溶かした。  そう、まだ始まったばかりだ。まだほんの一ページ。 <第2話へ続く>
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