第11話:君は君だから

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 先日、貰ったお小遣いで初めて贅沢な買い物をした。贅沢といっても、プチプラコスメを買っただけだ。化粧のことはよく分からなかったが、取り敢えずチークとリップティント、それからピンクのマニキュアを買った。二千円もしない買い物だった。ドキドキしながらチークを頬に乗せ、リップを塗った。マニキュアだって失敗しながらもしっかり塗った。なのに、文也以外誰も気付いてくれなかった。建福に至っては文也が「メイクいいね」と言っているのを聞いた後にもかかわらず、麗奈の顔をガン見しながら「え、化粧してる?」と首を傾げていた。正直一番に気付いて欲しかった人物が建福だった為、地味にショックだった。  その時の事を思い出し、麗奈は溜息を吐いてテレビに目を向ける。ちょうど一つの番組がエンディングを迎え、番組からのお知らせをお笑い芸人が読み上げている所だった。 『先週からお知らせしてますがね、締め切り三日後なんで宜しく! 商品はこちら! この子のママになりたい人は全力で戦え!』  麦茶が変な所に入り、麗奈が咽る。テレビに映されたのは一匹の白い犬。鼻はピンクで、目はパープルの小型犬だ。 「お、お……っ」  女の子だあああ! という麗奈の叫びに、何事かと建福が飛び起きた。
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