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その日の真夜中。ベッドに横になっていた麗奈が起き上がり人の姿になる。そして、部屋を後にし家を出た。
目に映った綺麗な白に、麗奈が声をかけた。
「犬だって、頼ってもいいんです。だからどうかこの場所を覚えていて。私は此処にいます。何かあったら、すぐに来てください。私は、同じ犬として貴女を全力で助けます。夢、叶えてくれて有難う。今日はとっても楽しかった」
ぬいぐるみを抱きしめていたニーナが振り返り、麗奈を見た。
「うん」
「絶対、絶対ですからね」
「れな、ないてる?」
「泣いてます。だって、声もかけずに行こうとするんですもん。ニーナちゃん」
「ニーナ、なんていえばよかった? わからない。おしえて」
「それは……」
「わかった。……また、あそぼうね。……あたり?」
麗奈が泣き笑いを浮かべ、当たりですと言った。するとニーナはへにゃりと随分気の抜けるような笑みを浮べた。
「ニーナ、せいかい」
「はい。正解です」
「だいじょうぶ。また、あえる」
「はい」
ニーナはもう一度だけへにゃりと笑った後、その場を後にした。麗奈は暫くその場に立って夜の空を眺めた。部屋に戻ったのは、その十分後。
「お、起こしちゃいました?」
「ううん、そんなことない。目が覚めただけ」
建福が胡座をかいて、窓から空を眺めていた。
「ニーナ、行っちゃったんだね」
「はい。でも、ニーナちゃんなら大丈夫です。私よりずっとしっかりしてます。ねぇ、建福さん」
「んん?」
「私って、何者なんでしょう」
建福はきょとんとした後、可笑しそうに笑った。
「あはは、どういうこと?」
「いえ、なんとなくです。忘れて下さい。変なこと聞いてごめんなさい」
「ほんと、変なの。何者って、麗奈は麗奈でしょ」
「……ほんとですね。凄く簡単な答え」
「うんうん。建福は建福ね」
「ふふっ」
「あはは。さ、寝ますか」
「はい」
犬は犬。人は人。君は君。私は私。
悩む程難しくない至ってシンプルな答えに、麗奈は目を閉じながら、簡単な答えを難しく考えてしまうなんてやっぱり人間って大変な生き物だなぁと思うのだった。
〈第12話に続く〉
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