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「全く期待外れだ。何が名司会者だって? 聞いて呆れる。君のお陰で娘が優勝した時のあの空気。もう二度と君とは仕事しない。恥を知れ」
楽屋では文也がプロデューサーからお叱りを受けていた。文也は一言も謝らず、返事をするだけ。
「聞いてるのか!」
「聞いてますよ。けど審査員買収するより恥ずかしいことした覚えないですねー俺」
「なんだと?」
「すんません本音出ました」
「さっきから……っ」
「文也さんが歌っていなかったら、僕が歌うつもりでした」
そう言って入ってきた旭にプロデューサーがビビる。旭はプロデューサーに近付き、天使のような穏やかな微笑みを浮かべる。
「僕が歌っていたら、僕も今みたいな感じで貴方から咎められていましたか?」
「い、いえいえ! とんでもない!」
「え? しないんですか?」
「ええ、ええ!」
「文也さんのことは咎めるのに? どうして僕には出来ないんです? なんで? 僕が世界中のお偉いさんと繋がっている資産家だから? 謎です教えて下さいプロデューサーさん。僕、ちょっぴり世間知らずなんです。確かに僕の一言で人事異動出来ちゃいますけど、僕そんなことやりませんよ。多分」
旭の謎のオーラに圧倒され後退るプロデューサー。
「こ、これで自分は失礼します」
「はい、お疲れ様です。あ、プロデューサーさん」
「は、はい!?」
「僕、文也さんの司会とてもやりやすいです。今後もよろしくお願いしますね。大丈夫です。上の人間に人事異動促したりとか僕本当にやらないんで。多分」
逃げるようにプロデューサーが去って行ったのを見て、旭が目を輝かせた。
「文也さん、あれ格好良かったですぅ! ドラマ見てるみたいだった! 泣きそうになっちゃった僕!」
「今の旭ちゃんのがだいぶ格好良かったぜ。長そうだったから助かったわ」
「ほんとに!? 格好いいとか初めて言われた! 嬉しいな! 僕あのプロデューサー嫌い」
苦笑いを浮かべる文也に、旭が優しく微笑む。
「文也さんに朗報です」
「ん?」
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