第21話:行く末を知る者

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***  此方は此方で落ち着いたらしい。アントニーとイコレフはもう寝ると言って家の中に入ってしまった。俊太はレイと重彦が心配だったのか、白い息を吐きながら外で待っていた。 「あ! コタ帰ってきた! 長かったねぇ! お腹痛くなったの?」 「……」 「……コタ? なんかあった? まだお腹痛い?」  珍しく眉間に皺を寄せて息を切らしている小太郎に、俊太は首を傾げる。 「……」 「コタ、大丈夫? 顔色悪いよ。もう家に入って寝た方がいいよ。ね?」 「……」  何かを言いたそうに口をパクパクさせる小太郎に、俊太は「言いたいことあるの? 聞くよ」と優しく微笑んだ。 「お、れ」 「うん」 「おれ……」 「うん」  小太郎は自分の手の平を見る。その手の平をぐっと握り、いつもの無表情に変えた。そして、棒読みの台詞を吐く。 「治った」 「コタ?」 「おやすみ」 「えぇっ!? 話したい事あるんじゃないの!? 聞くよ俺!」 「寝る」 「ええぇ……ま、まぁ、いっか。いつでも聞くからね、コタ」 「おやすみ」 「うん。おやすみ」  家に入って行く小太郎を見送ってすぐ、レイ達が戻って来る。駆け寄ってくる俊太の頭を、重彦が撫でる。 「押し付げで悪がったな。大変だったべ」 「ううん、大丈夫だよ。それよりもー……レイ、大丈夫?」 「うん。ごめんね、俊太君」 「俺は平気だよ。落ち着いたんなら良かった。寒いから、家に入ろう。レイ、鼻真っ赤だよ」 「そうそう。今日はもう寝んべ。な」  俊太と重彦がレイの背中を押して家の中に入れる。 (皆、良い子なんだ。私は知ってる。……止めなきゃ。この子達を絶対に苦しませたくない)  やっぱり外より暖かいねぇと子供のような笑顔を向けてくる俊太に、レイも微笑み返す。 (……弥助さんは何処にいる。弥助さんに会わないと……弥助さんに……) 〈第22話に続く〉
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