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第5話:自分の居場所
ゴールデンウィーク。ミステリー小説に出てくる殺人現場に使われそうな無駄に立派な洋館を前に、一同は感嘆の声を上げた。
「すっげぇ! 映画みたい!」
葵の言葉に、和希は腕を組んでどや顔を見せる。
森の奥に佇むこの立派な洋館は、和希の父である雅貴が所有する別荘。徳島にいる分家の総長が雅貴に「兄弟の証」としてプレゼントした物件だ。元々小さなホテルだった物を改装した為、個室も十二部屋ある。洋館だが温泉も完備だ。
「固定資産税やばそう」
「生々しい話は止せ、瑠璃」
この別荘に人が訪れるのはかなり久々だ。最近和希に友人が出来たと弥助から聞いた雅貴は喜び、和希にあの別荘は自由に使って構わないから友人でも誘って遊びに行くと良いと言ったのだ。そして今に至る。
「紅一点ですな、麗奈さん」
「紅だなんて……」
鍵を預けられていたのは五郎だ。五郎は無駄にでかくて分厚い扉の前に立ち、苦笑いをする。
「一応先日若衆を連れて掃除はさせたんですが、それでも多少埃っぽいかもしれません。如何せんロビーの天井が高すぎて、脚立を使っても届かず……ちょっと蜘蛛の巣なんかが」
「構わん。とっとと開けるが良いよ」
「はい」
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