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第7話:選んだ道
文也は鼻唄を歌いながら自宅玄関の扉を開ける。だが、リビングに行きその鼻唄も止まる。
「お帰りなさいませご主人様ぁ!」
「ご主人様じゃない」
「御覧くださいませご主人様ぁ! 本日は和食フルコースでございますよぉ! ご主人様和食お好きですよね!?」
「ご主人様じゃない。あと中華料理の方が好き」
「中華料理ですか! メモメモ」
「お前の耳都合いいなオイ」
テーブルに並ぶ完成度の高い和食の数々に文也が溜め息を吐く。
蘭丸と暮らして早一週間。想像以上に器用な蘭丸は、負傷した左手を使わずに家事をこなしていた。
「犬とは一体」
「あ、ご主人様。デトックスウォーターお飲みになりますか?」
「女子力高っ」
里親探しは難航していた。ラジオで募集するのはやめ、周りにいる信頼できる人間に声をかけて周っている文也。これがまぁ、意外と見つからない。大型犬はちょっと……と渋る人間の多いこと多いこと。トイプードルか。やっぱりトイプードルがいいのかと文也は頭を抱えていた。そんな文也の頑張りを知ってか知らずか、蘭丸は今日も元気良く家事をしている。
「お疲れですねぇご主人様。マッサージ致しますか?左手はまだ使えませんが……」
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