855人が本棚に入れています
本棚に追加
/1873ページ
第8話:海と憧れ
一人の青年が、自室でデザインの専門学校のパンフレットを眺める。そこに、ノックの音が聞こえた。
「ご飯よ。降りてきなさい」
「あ、はい」
青年は母親の声に返事をし、部屋を出てリビングに向かう。リビングには、ニュース番組に目を向けながらワインを飲む青年の父親がいた。
「母さんから聞いた。模擬試験の結果、前回より上がったらしいな。このままいけば第一希望の医大も問題ないだろう。お前は出来がいい。あいつとは違う。期待してるぞ」
「うん……」
青年は父親の斜め前に座り、目を伏せる。
「お父さん、僕、お兄ちゃんの事好きだよ」
機嫌の良かった父親が、眉を寄せた。
「お兄ちゃんは」
「毒されては困る。あれとはあまり連絡を取るな」
「でも」
「取るな。お前は自分の事だけ考えなさい」
「……」
「返事は」
「はい……」
最初のコメントを投稿しよう!